大判例

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大阪家庭裁判所堺支部 事件番号不詳 決定

少年 H(昭一八・五・一〇生)

主文

少年を大阪保護観察所の保護観察に付する。

押収してある木綿風呂敷二枚、麻繩四本、登山用ナイフ一、本懐中電燈一個、タオル一枚、犯罪計画記入半紙六枚、ノート用紙二枚、鎖二本、麻繩一本、アトラキシン一箱、ネネシン一箱、夏物タオル掛布団一枚(当庁昭和三五年押第一一七号の一から一二まで)はいずれも没収する。

理由

(非行事実)

少年は出生後間もなく両親が離婚したため爾来母○○ヱ(当五六年)から育てられ生活扶助を受けるなど貧困のなかを順調に成長し昭和三四年四月以降府立○○○高等学校に在学するに至つたものであるが、最近母○○ヱと松原市○町○○番地鍼灸業○田○○郎(当七〇年)との間に結婚話が持ち上つたにも拘らず右○田方に内妻○本○寿(当五八年)が居住していることからその実現を阻害されていることを知り同女を殺害すれば母○○ヱの結婚も円滑に実現するものと考え、昭和三五年七月三一日午前四時頃右犯行に使用する目的で登山用ナイフ、麻繩、タオル、睡眠薬、犬の鎖、風呂敷、懐中電燈を準備しこれを携行して前記○田方表日除鉄柱より屋根に登り裏側便所窓より故なく屋内に侵入しもつて殺人予備及び住居侵入をなしたものである。

(適条)

前示事実は刑法第一三〇条、第二〇一条に該当する。

(非行事実として認定しなかつた送致事実)

本件送致事実中、少年が強盗に使用する目的で前示登山用ナイフ等を準備したとある事実はその証明が十分でないのでこれを認定しない。

(要保護性)

本件非行は少年が前示のいきさつから○本○寿の殺害を考え非行二週間前から推理小説松本清張著「点と線」における完全犯罪にヒントを得、犯行方法、死体処理等に綿密な計画書を作り右計画に従い次々と供用物件を購入し準備した上その実行をなさんとして○田○○郎方に侵入したものの発見されて結果発生に至らなかつたものであるが、その目的態様からして非常に危険性高度の行為であり少年における数々の問題点の内在を示すと言える。

既述のとおり母一人子一人の家庭にあつて幾多生活上の辛酸を味わつて来た少年は知能普通域にあるため敏感にこれを感じ対社会的な劣等感を抱き、かつ、少年なりにその打開策に苦慮して来たのであるが、本件鑑別結果通知書に指摘のとおり一般的に社会性の発達は未熟で自己中心的欲求強く思考は独断的に流れ要求は直接的手段に訴えんとする衝動傾向があるがため本件非行に至つたものと理解される。

右のような性格は未成年者にあつては通常のものと考えられないこともないが、少年の場合本件非行と結びつけて考えて見ると特に行動目的と思考内容との間の独断飛躍が甚しい面があり、それだけ不適応行動を起し易く予後の危険性も十分考えられる。

従つて今後は少年において未熱である社会性を対人的接触を通じてその伸長を計ることが必要であると考え、そのためには専門家による補導が必要であると考えた。

なお押収してある主文掲記の各物件は本件非行を組成した物でいずれも少年の所有するものであるから少年法第二四条の二を適用しこれを没取することとし、主文第一項につき同法第二四条第一項第一号に従い主文のとおり決定した。

(裁判官 山田敬二郎)

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